鍼灸には興味はあるけど、鍼って怖いと思う方も多いと思います。確かに針というと、縫い針のような太い鍼を想像するのではないでしょうか。私もそうでした。ですが実際、鍼灸用の鍼はとても細くて精密に作られています。特に日本の鍼は繊細で非常に細く、製造会社「セイリン」の鍼は世界中で大活躍です。今回の記事では、まだ鍼をうけたことないって方に、少しでも知ってもらうことを目的に書いていきます。

 

鍼で痛みがやわらぐ

鍼ってなぜ痛みに効くのって思う方も多いかと思います。鍼は本当に奥が深く、効果の機序もたくさんあります。できるだけ簡潔に書いていきます。鍼をすると、エンドルフィンやエンケファリンという物質が分泌されます。この物質はモルヒネと似たような物質で、痛みを緩和する効果があります。意外かもしれませんが、我々人間の体の中には、元からモルヒネのような物質が存在しています。鍼ではこういった人体に元からそなわる物質や細胞たちが体の中で働き、効果を発揮します。そのため薬のように副作用はなく、鍼灸は副作用のない安全な治療法であるとWHOでも認められています。いわば鍼灸は、人体の元から備わる力をサポートするスイッチ役のような存在です。鍼が体を治すのではなく、自己免疫、自己回復力のお手伝いさんなんです。

また、鍼灸は痛みの緩和だけでなく、自律神経、内分泌、免疫などのバランスを整えたりと、幅広い効果があることも認められています。

 

安全性について

鍼灸といえば感染を心配される方もおられると思います。実際、ひと昔前の鍼灸は、使い回しの鍼を使っていました。その時のイメージがあるのかもしれません。しかし今はどこの鍼灸院も一度限りの使い捨ての鍼(ディスポ)を使用しています。使用器具等も滅菌器を使用し、感染の可能性はまったくありません。そして必ず国家資格の鍼灸師が行います。我々鍼灸師はリスクについて、学校で3年間しっかり学びます。数年前に柔道整復師が鍼を使ったことが問題になりましたね。絶対にあってはいけないことです。もしなにか怪しい治療院があれば、今は保健所に届けが出ているかなどを簡単に調べることができます。少しでも怪しいと感じた時はそいったところは避けるようにしてください。

 

施術後に重だるく感じることがある

副作用がなく安全ということなのですが、まれに瞑眩(めんげん)反応というものが出ることがあります。マッサージを受けたりした方はわかるかもしれません。これはいわいる「もみかえし」のようなものです。身体がだるく感じたり、眠くなったりします。鍼灸でもこのような症状が出ることがあるんですね。しかしこれは症状が良くなっていく過程で起こる症状です。気だるく感じた後には身体の調子がいつもより上昇していきますのでご安心ください。もちろん瞑眩(めんげん)反応は全ての方が体験するものではありません。

 

気胸のリスクについて

気胸ってご存知ない方も多いと思いますが、簡単にいうと肺(胸膜)に穴が空くことです。何もしてなくても気胸になることがあります。瘦せ型の長身男性に多いのですが、これを自然気胸と言います。このように何もしてなくても気胸になることもありますが、物理的な刺激によっても穴が開くことがあります。その中でリスクとして上がってくるのが、鍼です。しかし怖がることはありません。もちろん肺に向かって鍼を深く刺せば刺さります。しかし、鍼灸師は学校で嫌という程、気胸を起こさないための練習をしています。そして起こさないための鍼の打ち方、角度、深さ、そして人体の構造をしっかり学んでいます。学校では事故を起こさないための勉強がまずベースになります。鍼灸師は安全に対する自信をもっていますのでご安心ください。

 

痛さについて

初めて鍼灸を受けるにあたって一番気になるのは、痛くないのか?ってことかもしれませんね。縫針のようなものを想像している方もいるかもしれません。鍼灸で使う鍼は縫針の何十倍も細いです。すごく細いですよ。この細さというものはピンとこないかもしれませんが、一番細い鍼は、髪の毛ほどです。刺されても痒くなるまで気付かない、蚊の針の太さは0.05mm程度、そして髪の毛は0.10mm前後です。それだけ現代の鍼灸の鍼は細くなっています。それだけ細いため、鍼の刺入時は痛みを感じない時もあります。少し痛みを感じてもチクっとする程度でおさまります。

しかし、チクっとした感じと、またちょっと違ったものを感じることがあります。ズーンとするような、重い感じのようなものです。これを我々は「響き」と言っていますが、生理学的に簡潔に言うとポリモーダル受容器が反応した時です。この「響き」があれば人体にはさまざまな良い反射が起きます。この機序についてはまた別の機会に詳しく書きますね。感覚としては人によっては気持ちよく、心地よく感じたりします。しかし苦手な人もいるかもしれません。これは受けてみないとわからないですよね。よく初めての感覚であるため、神経を傷つけられたのではなんて思う方がいますが、そんな事はまったくないので安心してください。

 

日本鍼灸

日本の鍼というのは実は、世界ですごく高い評価を得ています。海外で活躍している日本人鍼灸師は大人気です。やはり日本人は繊細です。日本料理が世界で高評価なのも、そういった繊細さがあるからではないでしょうか。そんな海外で高評価な日本鍼灸は日本国内ではなぜか大きく普及していないんですよね。アメリカでは予防医学、統合医療などの影響もあるためか、体本来の治癒力を高める鍼灸は大人気です。日本のような健康保険制度がなく、未病で防ごうとする国民一人一人の健康意識が高いことも関係あるでしょう。日本の医療費は膨らむ一方です。鍼灸がもっと普及し、健康づくりのサポートに貢献できたらと思います。